THE CAMPUSには「街とつながる」というキーワードがあったので、どれだけ働いている人や関係している人を巻き込んでいくのかというところはかなり重要視していました。
「街とつながる」というキーワードがあり、そこから「参加実感を大事にしたい」という着想を得て、様々な仕掛けを生み出していったという流れです。
当時はコロナ禍で出社率が極端に下がっている時期でした。
出社出来ない中でどのように会社・場に愛着を持ってもらうか。
来た時は居心地が良く、むしろ来たくなるぐらい愛着を抱いてもらうにはどうすればいいのか。
このような問題意識があり、そこから解決策を見出していったのです。
場に愛着を抱いて
もらうために
オフィスをデザインする会社であるコクヨさんは、ABW (Activity Based Working=アクティビティ・ベースド・ワーキング)という考え方を大切にされています。
行動=アクティビティに応じて場所を変えながら働くという考え方です。
この考え方に沿った形で本の空間もつくっていきたいと思い、私たちは勝手にABR(Activity Based Reading=アクティビティ・ベースド・リーディング)と名付けました。
集中のためのスペースであれば、どうすれば集中モードに入りやすくなるか?
会議のためのスペースであれば、会議の初めの自己紹介でどうやったらお互い最速で理解し合えるか?
このように場の目的に応じて本と人の関わり方を変えてみるということを実験してみたいなと思ったのです。
例えば南館1階のPARKSIDEは、オフィスビルだった場所を開放し、誰でも利用できるパブリックフロアになっています。ステーショナリーにファーニチャーなどコクヨのたくさんのプロダクトを扱うショップと、コーヒースタンドがあります。まさに街角のコーヒースタンドという趣で、コーヒーをはじめ、チャイやキッズメニューなど、大人も子供も楽しめるラインアップ。そこには、近くで働く人だけでなく、近隣に住むファミリーにもふらりと訪れて欲しいという想いがありました。「さまざまな人がゆったり過ごす場所」というPARKSIDEの目的を後押しするために、私たちは、本を選び、空間に埋め込んでいきました。白いタイル張りの大きなひな壇のような座席には、まるで誰かの家のように、無造作に本を散らしています。飾りではなく手に取って読むことを示唆しています。空間に本を置くということは、本を読むという行為が内包する時間の分だけそこにいてもいいと感じてもらうという狙いがあります。店内の隅っこにテレビが置かれていていつも野球中継を映している定食屋でついつい長居してしまうような、そんな感覚です。
そして、子供だけでなく大人もついつい夢中になって楽しめるような絵本を選んでいます。空間のアクティビティの質感は小さなステップから変えることができます。1冊の本によって人と人とを出会わせることは難しいかも知れません。しかし、5分だけ長く過ごしてもらうこと、テイクアウトしようと思ったけどふと腰かけてもらうことは1冊の本でもできそうです。小さな行動の変化によって人と人の動きが絡み合う確率が高まっていく。小さなステップを本によって達成しながら、人同士が混ざり合うという大きな目的に近づいていく。そんなシーンをABR(Activity Based Reading=アクティビティ・ベースド・リーディング)から描き出したいですね。
アクティビティ・ベースド・リーディング
コクヨさん自体が“企み”ながら、面白いことを考えながらフロアを準備していたので、私たちはそこにどう絡んでいくかをとにかく大切に、既存の体験を紐解くための情報をつくっていく、あるものに入り込んでいくプランニングを追求しました。
本を置くという行為には、情報をその場所に配置するという側面が強いと思うんです。
だからその側面を活かして、その場で何をしてほしいか?といったインストラクション的な要素も含めて、自分たちにも面白いことが出来るんじゃないかというわくわくとともにやらせていただきました。
コクヨさんの“企み”
に入り込む
サインはあえて作り込み過ぎず手書きで作成しました。
サインは、空間全体のデザインにあわせてつくられるため、空間のトーンにあったデザインが多いです。この方法は空間の統一感を出すのに効果的なのですが、同時に、かんたんに手を加えられないという印象を与えてしまうこともあります。
本は移り変わりもあり、入れ替えもできるのが特徴です。
そうであるならサインも気軽に入れ替えが出来て、自分たちが手を加えてもいいと思ってもらいたい。
参加実感を味わう、誰かの気配を感じるという意図を込めて、あえて文房具で、ポストカードをクリップで挟んで立てるというスタイルのサインをつくりました。
一度置いた本もその場所に固定するのではなくて、どんどん動いていく姿を想像したり、読む人によって読まれた後の形跡も変わっていくといった、誰かの気配があるような場になると良いなと思っています。
人の気配を感じること
THE CAMPUS
リニューアル日:2021年2月
アクセス:〒108-8710 東京都港区港南1丁目8番35号
公式サイト:https://the-campus.net/
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